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生地・ブランドについて
生地は、現存するものだけでも、その種類は100を優に超え、その数はもはや無数ともいわれますが、オーダースーツという世界に1点しかないものを作る上では、この中から生地(ブランド)を選ぶということが、とても重要な要素になります。
採寸前にお客様のイメージをテーラーに伝えるという、とても大切な工程がありますが、この時点で生地・ブランドについても伝えなくてはなりませんので、この生地(ブランド)選びがどれだけ重要かということがお分かりになるかと思います。
その際、生地・ブランドについての判断基準として、
(1)生地の強さ
(2)生地の質感
(3)生地の光沢感
の大きく3つのポイントが挙げられます。
(1)生地の強さ
生地の強さとは、文字通り「生地の丈夫さ」のことで、生地が強ければ、仕上がるスーツも丈夫なものになり、何年、何十年と着ることができます。
これには、
[イ]糸の密度
[ロ]繊維の量
の2点が関係してきます。
[イ]糸の密度
糸の密度を高くすれば、生地の強さは高まりますが、生地としては重くなり、通気性が悪くなってしまいます。一方で、密度を低くすると、生地の強さは低くなってしまいますが、生地としては軽くなり、通気性の良い生地となります。
[ロ]繊維の量
糸というのは、繊維から作られ、羊毛などの繊維を紡績したものを「単糸[たんし]」とよび、さらに、この単糸[たんし]を2本ずつ縒り[より]合わせたものを「双糸[そうし]」とよびます。
単糸[たんし]で作られた生地は、繊維量が少ないために、軽くて通気性の良い生地となりますが、生地の強さは低くなってしまいます。一方で、双糸[そうし]で作られた生地は、繊維量が多いため、重くて通気性の悪い生地となりますが、生地の強さは高まります。
(2)生地の質感
生地の質感というのは、「生地の触感」と言い換えることもでき、この質感・触感が着心地を左右するとも言えます。
これには、
[イ]原材料となる糸の細さと繊維の長さ
[ロ]使用する糸の量
[ハ]糸の織り方
の主に3つの要素が関係してきます。
[イ]原材料となる糸の細さと繊維の長さ
糸の細さについて
生地の原材料となる糸の細さについては、「番手[ばんて]」という単位で表します。
番手[ばんて]は、「10番手」、「20番手」というように表され、その数が大きい方が、より細い糸ということになります。素材によって基準が多少異なっていますが、基本的には「同じ重さでどれだけの長さの糸が作られているか」ということから糸の細さを比べるためのものです。
例えば、ウールの場合は、羊毛1グラム当たりで1メートルの糸が作られているものを1番手としていて、1グラム当たりで10メートルならば10番手、というようになります。
そして、数の大きい番手の糸を使った生地は、強度は低下しますが、薄くて、肌触りの滑らかな生地になります。
繊維の長さについて
糸は、紡績する繊維の長さによって、
[a]梳毛糸[そもうし](=ウーステッド)
[b]紡毛糸[ぼうもうし](=ウーレン)
の2種類に分けられます。
[a]梳毛糸[そもうし](=ウーステッド)
5cm以上の原毛で作られた糸のこと。
梳毛糸[そもうし]を使った生地は、長い繊維を使っているため、折れ目がなく、繊維が平行に揃い、太さが均一になるので、生地の強さは高まりますが、肌触りが粗くなってしまいます。
[b]紡毛糸[ぼうもうし](=ウーレン)
5cm以下の毛で作られた、もしくは、そのような毛が混じっている糸のこと。
紡毛糸[ぼうもうし]を使った生地は、短い繊維を使っているため、折れ目ができるので、生地の強さは低下してしまいますが、肌触りは柔らかく、色々な風合いを持たせることができます。
[ロ]使用する糸の量
生地というのは、糸を1本ずつ織り込んでいって作ります。
使用する糸が少ないと、生地は軽くなり、強さは低下しますが、糸同士の間隔が大きくなり、いわゆる『打ち込み』とよばれる糸同士の密度が低くなるため、肌触りが粗い生地になってしまいます。
逆に、使用する糸を多くすると、生地は重くなり、強さは高まりますが、糸同士の密度が高くなるため、きめ細かい肌触りの良い生地になります。
[ハ]糸の織り方
糸の織り方には、
[a]平織り[ひらおり]
[b]綾織り[あやおり]
[c]朱子織り[しゅしおり]
の3種類があり、これを三原組織と呼びます。
[a]平織り[ひらおり]
縦糸と横糸を交互に1本ずつ規則的に組み合わせて織る方法で、最も基本的な織り方。
この織り方で作られた生地は、縦糸と横糸が交互に交差するため、密度が低く、通気性は良くなりますが、肌触りの粗い生地になってしまいます。夏用の服地によく用いられます。
[b]綾織り[あやおり]
縦糸もしくは横糸のどちらかを2本以上連続して織る方法。
『斜紋線[しゃもんせん]』という表面に斜めの線が見られるのが特徴で、この線の角度は、糸の太さや密度のバランスによって異なります。この斜紋線[しゃもんせん]が特徴的なため、綾織りは別名『斜文織り[しゃもんおり]』とも言われています。
この織り方で作られた生地は、縦糸と横糸の交差する点が離れているため、密度が高くなり、重くなってしまいますが、肌触りの良い生地になります。
[c]朱子織り[しゅしおり]
縦糸もしくは横糸のどちらかを4本以上連続して織る方法。
三原組織のうちで最も縦糸と横糸の交差する点が少ないため、この織り方で作られた生地は、最も密度が高く、重い生地になりますが、とても肌触りの良い滑らかな生地になります。
(3)生地の光沢感
生地の光沢感とは、生地の「見た目」に関わることで、
[イ]原材料となる糸の細さ
[ロ]生地の加工方法
の2点が重要になります。
[イ]原材料となる糸の細さ
一般に番手[ばんて]が大きい糸を使用した生地は、強度は低下しますが、生地の光沢感は高まります。
[ロ]生地の加工方法
加工方法については、『フィニッシング』といわれる原糸から生地になるまでの工程の 仕上げにあたる部分が大きく関係してきます。ここではその一例を紹介します。
カレンダー加工
生地をカレンダー(ローラー)に通して、熱を加えながら潰すことで、生地全体に光沢を出す加工方法。
チンツ加工
生地に糊[のり]をつけて、加熱したカレンダー(ロール)に通して潰すことで、カレンダー加工よりも少し鈍い光沢を出す加工方法。
シルケット加工(=マーセライズ加工)
濃度の高い苛性ソーダーを使い、生地を引っ張りながら乾燥させることで、美しい光沢や独特の風合いを生み出す加工方法。マーセライズ加工ともいう。
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